バレンタインも無事に終わり、ほっとついたひと息にコケてしまった! なんと家の前のほんのわずかな階段から足を踏み外して右足の小指を骨折。戦闘モードの私はあえなく撃沈したのでした。
全治1ヶ月半、松葉杖生活を余儀なくされた私・・・
時を同じくして遅ればせながら我が家にパソコンがやってきました。
軟禁状態の私は友人から借りた早打ち練習ソフトを使って早打ちの訓練をしたりして、 見よう見まねで初心者なりにパソコンをいじれる様になった訳です。マウスの使い方一つ知らなかった私が、 大進歩ですね(と、自分に甘い?)。 でもこれでとりあえずはあんな"穴があったら入りたくなるような恥ずかしい思い"はしなくても大丈夫かな。 まさに文字どおり"怪我の功名"ってヤツですな。
治ってからの私はインテリア会社のパートを約1年、その会社のつながりでフードコートの飲食店でお店が閉店になるまでの約1年半を働きました。
仕事は常に一所懸命にやりましたし、苦しい事もあったけど仕事を通しての喜びや出会いもたくさんありました。
でも、いつも私の中には沸々とした憤りのようなものが湧き上がってくるのでした。
(私は本当にこのままで良いのだろうか)
日々の生活に追われるように働いて、忙しい毎日がひたすらこなされそして過ぎてゆく。 生活が厳しくて買いたいものも我慢して、ささやかな贅沢・・・例えば旅行をしたり美味しいものを食べに行ったり、やりたい事の殆どをあきらめて、ただ生活の為に働いている・・・
(本当にこのままで良いのだろうか)
考えても答えが出るわけでもなく、忙しさの中で時だけが容赦なく過ぎてゆくのでした。
本もそこそこ読みました。 いわゆる成功していると言われる人達の本などを。 色んな本を読んで私はある一つの結論に達しました。 大体みんな言っている事は一つなのです。
それは、次のような事です。
人が想像できる事、望んだ事は必ず実現できる
・・・何だか、CMのワンフレーズですね。 でも私はこの言葉におぼろげながら確信めいたものを覚え、だったら私がそれを身を持って実現する! と思い始めていました。
平凡で何の取り柄もないと思っていた私に何か出来たなら、それを見ていた人々に、 「だったら自分にも何か出来るのでは!」 と思ってもらえるかもしれない・・・
今の混沌とした世の中、人々が抱える様々な苦しみ、そして悲しみ。 前途に満ち溢れている筈の若者が絶望している。 働いても働いても豊かになれずにもがいているワーキングプアやインターネットカフェ難民等、 もう決して這い上がれないと諦め、そして絶望している人々がどれだけたくさんいることでしょう。
何とかしなきゃ。もちろんそれはまず自分の為、家族の為ではあるのだけど、 それが出来たなら諦め絶望している人々に少しでも希望の光を与える事ができるかもしれない・・・
・・・とよっしゃあ〜と声高らかに叫んだところで良い考えが浮かぶわけでもなく、時ばかりが過ぎてゆきました。
ふっと思いついたアイデアをあてに特許を取ろうと意気込んでみました。模型を作り弁理士先生の相談会に行ってみたり、 必要な書類を調べたり、発明学会なるものに入会して果たして特許が取れるかどうかを確認したり。
なかなか一筋縄にはいきませんが、これらはまだあきらめずに続けています。
ある日、部屋の窓から外の景色を眺めつつぼんやりと考えました。 時折感じる漠然とした虚無感。 何だろう・・・夫もいて子供達もいてとりあえず元気で、そりゃあお金にはちょいと不自由しているけど、本当はもっと幸せを感じても良い筈なのに何故かそう思えない・・・ 今現在もそうだし未来に対しても漠然とした不安と焦燥感で心の中がいっぱいになる・・・
私は一体何なんだ! 私は一体何をしたいんだ! 私は一体どう生きてゆきたいんだ!
時折、自分が"かごの中の鳥"のような気がしてくるのです。
そう、かごの中の鳥・・・
ふと、窓のサッシのカギに目がゆく。
そのかごにはカギがかかっていない・・・
でも、その鳥はけっしてかごから出ようとはしない・・・
何かが私の中で閃きました。
そうだ、これだ!
私は書きました。
のめりこむ様に来る日も来る日も、何かに憑かれたように書き続けました。
そうして一つの物語「7センチの大空」が仕上がりました。
つづく・・・
又吉 ちさと / 文+企画