恵良美和 / 文
眠っていた心の中に
起こされた思いは止まらないから
横顔に恋をした
(歌詞一部を抜粋しています)
と、 aikoが歌う主題歌『横顔』は、蛍の心情にピタリと寄り添っている。 ドラマでは曲の全てを聴くことはできないが、「切ない」「愛しい」と幾度も繰り返されるフレーズが、 揺り起こされた干物女の乙女心そのものである。
蛍は何かとピンチに遭遇しながら生きているが、毎回ドラマのエンディングで『横顔』の イントロが流れると、ポッと光が灯るような印象がある。ポップで明るい楽曲だ。
それもそのはず。aiko曰く、落ち着いたイントロにすることが多いが『横顔』に関しては、 全体的に素直な感じにするために、明るいイントロに変えたとか。
聴いていると、うきうきわくわくしてくるような歌い方についても、
「笑って歌ったんです。そうすると口角が上がるので、ちょっとだけピッチが上がる。 だから普段より、若干ピッチが高いんだと思いますね」
というような工夫が隠されているのだ。
そしてaiko自身、
「横顔に恋をした」というフレーズが、曲の中で一番大事な言葉だったので、そこに重点をおきつつ、一生懸命歌った
という。
蛍とマコトの関係は、会社での顔しか見えていない中で始まっている。 正面とは異なるほんの一面「横顔」だけ。マコトは蛍の、干物女としての実態を知らず。
勿論、マコトが現れたことは蛍に幸せを実感させている。
初デート前には、蛍の心の声が((幸せ))と繰り返している。
恋愛を面倒に思う干物女の顔も、蛍の横顔・・・ただの一面に過ぎないのかもしれない。
しかしながら、干物生活は、蛍自身がお気に入りを詰め込んだ暮らしでもある。 自分にとって心地よいことを追求した結果だから、それもまた一つの幸せの形なのだ。 同居人の部長にどれほど説教されようと、マコトの存在があろうと、蛍は基本的に自分の生活スタイル、 そして自身についても非常に肯定的でひたむきである。であるが故に、前向きでもある。
「『横顔』とか、今までにない感じだから。ちょっと前向きな曲って、あんまり作ったことなかったんで」
aikoがそう語る主題歌『横顔』から醸し出される前向きさは、蛍の持つ要素を彩り表現しているかのようだ。
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流行を意識したファッションで通勤し、会社では仕事を懸命にこなすごく普通のOL。 が、家での実態は年季の入ったジャージ姿で、新聞紙をかぶって寝て、独りでビールを飲む干物女。 ドラマ『ホタルノヒカリ』(NTV)では、干からびた生活を送る蛍(綾瀬はるか)に突如おとずれる 同僚の手嶋マコト(加藤和樹)との恋模様と、部長(藤木直人)との同居生活が描かれている。